本文へスキップ

Eコマース実務

AIによる商品発見は、ChatGPTではなく自社サイトから始まる

マレーシアの買い物客の74%が、すでに買い物中にAIを使っています。Adobe CommerceのLive SearchとAIレコメンドを4件の実装で導入し、何が変わったのかをまとめます。

AIによる商品発見は、ChatGPTではなく自社サイトから始まる

Danny Khow(共同創業者 兼 マネージングディレクター)5分で読めます

先ごろ公開されたAdyen Indexのレポート(新しいタブで開きます)によれば、マレーシアの消費者の74%がすでに買い物中にAIを利用しており、62%は新しいブランドとの出会いにAIが役立つことを望んでいます。同じレポートを扱った報道(新しいタブで開きます)と併せて読むと、買い物客がChatGPTに「何を買えばいいか」を尋ねている情景を思い浮かべたくなります。しかし、たいていの小売事業者にとって、それが実際に起きている場所はまだそこではありません。起きているのは自社サイトの検索窓とレコメンドのカルーセルであり、しかもそのAI機能は、多くの場合すでに自社のEコマースプラットフォームの中に、使われないまま備わっています。

当社はこれまで4社のAdobe Commerceのお客様に対し、2つのAI機能を導入してきました。Adobe Sensei搭載のLive Searchと、標準搭載のAI Product Recommendationsモジュールです。それぞれが実際に何をするのか、そして稼働後に何が変わったのかをご紹介します。

何を表示するかの判断材料買い物客が実際に得られるもの

Live Search

言い回しを読む

Adobe Senseiによる意味ベース(NLP)のマッチング。買い物客が自分の言葉で必要なものを説明すれば、どの商品ページにもその表現がなくても結果が返ります。

AI Product Recommendations

行動を読む

カタログ全体にわたる実際の閲覧・購買の傾向から学習するため、表示される一覧は全員一律に用意されたものではなく、その買い物客のために組み立てられます。

Live Search:キーワードではなく意図を理解する検索

一般的なEコマースの検索はキーワードを照合します。「オイリーヘア向け商品」と入力しても、キーワード照合型のエンジンでは、商品にその通りのタグが付いていなければ結果は返りません。Adobe SenseiのLive Searchは、人と話すのに近い動き方をします。買い物客が「オイリーヘアに合う商品を見せて」と検索すれば、その言い回しがどの商品ページにも登場しなくても、関連する結果が返ります。これは意味ベースのNLPマッチングであり、商品説明で使われている正確な言葉を買い物客に当てさせるのではなく、その人が何を言おうとしているのかを理解するために作られています。

びっしりと商品が並ぶ店の棚に手が伸び、背後に何列も並ぶほぼ同一の無地の瓶の中から、琥珀色のガラス瓶を1本だけ手前に引き出している。
棚の瓶はどれも答えになり得ます。仕事の本質は、買い物客が実際に言い表したその1本を手元に届けることです。

AI Product Recommendations:手作業のキュレーションに頼らないパーソナライズ

レコメンドのモジュールは、カタログ全体にわたる実際の閲覧行動と購買行動から学習し、その買い物客が本当に欲しがりそうな商品を提示します。誰に対しても同じ内容が並ぶ、手作業で組んだ「こちらもおすすめ」の一覧とは違います。

4件の実装で何が変わったか

指標結果
検索結果の精度+30%
検索から購入への転換率+10%
レコメンド商品のクリック率+20%
平均カート単価+5%

検索精度は、ほかのすべてを引き出す数字です。探しているものを実際に見つけられた買い物客は、3クリック先でもまだ導線の中に残っている買い物客であり、それが転換率とカート単価の数字にそのまま表れます。

見落とされがちな点:時間が必要になる

どちらの機能も、初日からうまく働くわけではありません。いずれも学習型のシステムであり、出力が良くなるまでには実際の顧客の行動データが必要です。当社の経験では、精度と転換率の改善が数字として表れるまでには、稼働開始から8〜12週間かかります。稼働2週間後に結果を確認して「これは効いていない」と結論づける小売事業者は、確認が早すぎます。この助走期間は、結果を判断したあとではなく、判断する前に見込んでおいてください。

無人の店内通路を上から見た様子。淡い色の床の艶が擦れて失われ、什器の端を回り込むようにゆるやかな曲線の跡がいくつも残っている。
この動線を誰かが設計したわけではありません。何千回もの実際の店内移動が残したものであり、現れるまでにひと商戦分の時間がかかっています。

改善の度合いも、4社すべてで同じだったわけではありません。SKUが5,000を超える大規模なカタログを持つ小売事業者ほど、改善幅は大きくなりました。理由は単純で、カタログが大きいほど、キーワード検索だけで目当ての商品にたどり着くことがもともと難しく、意味ベースの検索とパーソナライズされたレコメンドが実際に解決できる余地がそれだけ大きかったからです。SKUが300程度の店舗では、そもそもこの問題自体が小さくなります。

機能そのものの実装は比較的短く、通常2〜4週間です。8〜12週間という待ち時間は、稼働後にアルゴリズムが実際の顧客行動から学習するための期間であって、技術的なセットアップにかかる時間ではありません。

(もう1点、技術的に触れておく価値のある注意点があります。Live Searchの商品データを正確に同期させ続けること、とりわけ在庫や価格の変動が多いカタログでこれを維持することは、いくつかのプロジェクトで相応の連携作業を要しました。これはAI固有というよりも同期・データパイプラインの問題なので、本稿で深く掘り下げる代わりに、Live Searchとカタログがずれていく理由については別稿にまとめました。)

AIと小売という大きな流れの中での位置づけ

Adyenのデータはまた、マレーシアの買い物客の半数以上が、AIに購入手続きまで任せることに抵抗を感じていることも示しています。さらに同レポートの2025年版(新しいタブで開きます)では、小売事業者によるAIの使い方を立ち入りすぎだと感じる人が26%いました。サイト内の検索とレコメンドは、この線引きの「抵抗の少ない側」にあります。主導権を握っているのは依然として買い物客であり、閲覧するのも決めるのも本人のままで、ただキーワード照合や固定の「おすすめ商品」枠よりも自分を理解してくれる仕組みが横にあるだけです。外部のAIアシスタントが自社ブランドを推してくれるかどうかを追いかけるよりも、これは明らかにリスクの低い投資先であり、しかも多くの小売事業者にとっては、今動かしているプラットフォームの中にすでに用意されています。

Adobe Commerceをお使いで、これらをまだ有効にしていないのであれば、自社のカタログで何が必要になるかをご相談ください


出典:74%・62%および購入完了に関する数値はAdyen Index 2026 マレーシア小売レポート(新しいタブで開きます)、小売事業者によるAIの使い方を立ち入りすぎだと感じる26%については2025年版マレーシア小売レポート第2章(新しいタブで開きます)によります。加えて、当社が手がけた4件のAdobe Commerce実装の結果に基づいています。

続けて読む

関連記事

プラットフォーム、システム連携、そして買い手がブランドを見つける仕組みについて。

ご検討中のプロジェクトはありますか?